犬の散歩の問題の一つに散歩中にリードをグイグイと引っ張ってしまうというものがあります。もし散歩中にリードが離れてしまったら犬を制御できず、事故にあってしまう危険もあります。
リードを引っ張ることで首に負担がかかるので気管虚脱の原因にもなりますし、骨格へ影響を及ぼすことも考えられます。また、引っ張りながら歩くので、体が斜めを向いてしまい、体のバランスも悪くなります。自分を中心と思って歩いているので飼い主さんの声も耳に届かなくなってしまいます。
・事故に遭う可能性がある
・気管虚脱の原因になる
・骨格への影響がある
・飼い主の負担が増える(特に大型犬)
STEP1 リードを変える
散歩中の引っ張り癖を直すには散歩中の状況を変える必要があります。首輪を太くしたり、リードをハーネスに変えます。また背中に付けるタイプに変える事で、首への圧力が減るので首への負担も軽減され気管虚脱も避けられます。
STEP2 飼い主と共に動くようにさせる
首輪が変わるだけで散歩中の歩き方が変わることもあります。それでもリードを引っ張る場合には、リードにテンションがかかっている時には飼い主さんは歩かないでその場に立ち止まりましょう。犬も進めなくなります。リードが緩んだら歩きます。飼い主さんが歩かないと犬も進めないので、グイグイと引っ張るのをやめます。
止まっている間はどうして進めないのか犬に考える時間を与えます。一定時間止まったら飼い主さんから歩きはじめます。
STEP3 止まり・動きを繰り返す
また犬が引っ張ったら立ち止まります。何度も繰り返すと犬は引っ張ると歩けないということを学び引っ張るのをやめます。リードが張っていない状態で歩けている時には褒め言葉をかけましょう。引っ張った時に飼い主さんは絶対に歩いてはいけません。ここを曖昧にすると犬は理解しづらくなります。
リードが緩むまで待ちますが、いつもの散歩道だと何回繰り返しても引っ張ってしまう場合には、行ったことのない道を歩かせてみましょう。
ここでも引っ張ったらリードをしっかりと持って飼い主さんは立ち止まります。これを何度も繰り返すことで犬は引っ張ると歩けなくなるということを学習し、引っ張らなくなります。
まとめ
ここまでが簡単なトレーニングの概要です。ここから本格的に愛犬のお散歩で繰り返される引っ張り癖を直すしつけを解説していきます。
室内でのお散歩トレーニング
STEP1 リードを短く持ってまっすぐ歩く
引っ張り癖を直すには初めは室内でトレーニングをします。リードは緩んだ状態になるようにしますが、短く持ちます。片手におやつを持ち「あとへ」と声を掛けてからおやつで誘導し歩きます。まずはまっすぐ歩くだけです。リードが緩んだ状態のまま歩けたら褒め言葉をかけてご褒美をあげます。
STEP2 距離や方向転換などを加える
これができるようになったら歩く距離を伸ばします。方向転換もして歩いてみましょう。飼い主さんに付いて歩くことができたら褒め言葉をかけてご褒美をあげます。
途中立ち止まって、ストップもできるようにしましょう。
STEP3 リードを外したトレーニング
リードを付けた状態で飼い主さんの側で「あとへ」の声で歩けるようになり、ストップも方向転換もスムーズにできるようになったら、リードを外してトレーニングを行います。できたら褒め言葉をかけてご褒美をあげましょう。
外でのお散歩トレーニング
STEP4 室内から外へ出るまで
室内でできるようになったら外に出てトレーニングを行います。リードを付けてまずはドアから外に出るところからトレーニングを行います。外に出たくて、ドアが開いた途端飛び出してしまうと危険です。ドアを開けて犬が先に出てしまったらリードを引っ張って家の中に戻します。飼い主さんの横に付かせて、ドアを開け立ち止まってみます。犬が先に出なければ飼い主さんがゆっくりとドアの外へ出てそのあとを犬が出るようにします。犬が先に出てしまったら何度もリード引っ張って室内に戻し、犬が待てるようになるまで繰り返し行います。
STEP5 外に出てからのトレーニング
外でのトレーニングは犬の気が散らないようにまずは人通りの少ない静かな場所で行いましょう。「あとへ」と言って飼い主さんのそばで歩けるようにトレーニングをします。リードは短く持ちます。犬がリードを引っ張ったら飼い主さんは立ち止まり、リードが緩むまで待ちます。方向転換やストップもトレーニングします。これらは室内でやっていたものなので、愛犬の様子を室内と外との違いを観察して問題点を見つけ工夫しましょう。
できるようになったらお散歩中にトレーニングを行います。犬が飼い主さんの前を歩こうとしたらリードを引っ張って後退します。犬が飼い主さんのところまで来たら前進します。これを繰り返し行います。
リードを引っ張り続け、上手くいかない場合の対処法
犬がリードを引っ張ってしまうのには必ず理由があります。その理由を考えずに対処法を取ってしまうと、うまくしつけができないということもあります。
犬が散歩中に引っ張ってしまう原因として考えられる大きなポイントは次の3つです。
- 散歩が大好き
- 飼い主さん僕に興味ないんでしょ?と思っている
- 飼い主さんはいつ側を歩きなさいと教えてくれた?
犬目線で考えるとこの3つが理由として考えられます。
では順番に解説していきます。
原因1 散歩が大好き
「散歩が大好きだから」というのが理由の場合、散歩が楽しすぎて飼い主さんの命令を聞くどころではないという状況になってしまっています。1日1回か2回の散歩の時間が待ちどうしくて仕方ない。そしてやっと散歩に時間がきて「やった!」と喜んでいるときに飼い主さんが「こら、待ちなさい。」と言っても犬の耳には入りません。
この場合、今の散歩の量では足りていないということが考えられます。お散歩の距離であったり、時間であったりが、満足しきれていないのです。なのでお散歩の時間が待ち遠しい過ぎて、飼い主さんの命令が聞こえなくなってしまうのです。飼い主さんに集中するどころではないのです。
犬のトレーニングでは、引っ張ると首輪がしまって苦しい思いをするようにして引っ張り癖をやめさせるものや、クリッカートレーニングなど様々なものがあります。でもなかなか効果がないという犬の場合には、楽しみにしていたお散歩のときに多少首が苦しくても、その苦しさより、「やっとお散歩に行けた」という楽しみの方が勝ってしまっているのです。では、どうすれば良いのでしょうか?
散歩を短くして分散させる
楽しみを分散させるという方法があります。どういうことかというと、今よりも散歩の回数や時間を増やすのです。例えば今1日1回30分のお散歩にしている場合には、それを1日2回20分ずつに変えてみたり、1日2回20分ずつお散歩をしているのであれば、1日3回15分ずつにします。1回ずつのお散歩の時間は短くなっても回数が増えることが大切です。こうすれば犬にとって楽しみが分散されるので、今までよりもお散歩に対する楽しみというのが減ります。
散歩前に遊んであげる
忙しくて回数を増やすことが難しいという飼い主さんもいるでしょう。そういう場合には、お散歩に行く前に思いっきり遊んであげましょう。こうすることで、お散歩に対する楽しみを分散することができます。もしくは1日に1回犬と遊ぶ時間を作ってあげましょう。これもお散歩へ行けなくてもお散歩と同じような意味合いを持つ「遊び」で楽しみを分散させることができます。1日に5分でも10分でも犬と遊ぶ時間を作ることで、犬は散歩の時間だけでなく、飼い主さんと遊ぶ時間も楽しみにするようになります。
原因2 飼い主さんに僕に興味がないでしょ?と思っている
「飼い主さんに僕に興味がないでしょ?と思っている」が理由の場合です。飼い主さんはお散歩を楽しんでいますか。 携帯を見ながらお散歩をしていたり、つまらなそうにお散歩をしていたりとほとんどの飼い主さんがあまり犬に興味がなさそうに見えます。何のためにお散歩に行っているのか考えていない人が多いのではないでしょうか。犬に興味を持って話しかけている人はあまり多くありません。
飼い主さんがお散歩を楽しまないと犬もお散歩を楽しめません。お散歩自体は楽しんでいますが、飼い主さんとのお散歩を楽しんでいないということです。飼い主さんが犬のことを見ていないので、犬も他の犬や人、車など色々なものに興味を持ってしまうのです。子供は親を映す鏡という言葉がありますが、犬も同じで、犬は飼い主さんを映す鏡とも言えるのです。
人の子供も親のことを見て行動していますね。犬も同じで飼い主さんのことを見て行動しています。犬の行動で困っている飼い主さんは、まず、飼い主さんが犬の気持ちに寄り添ってあげましょう。その第一歩が飼い主さんがお散歩を楽しみ、散歩中に犬にたくさん話しかけてあげることです。そうすることで、犬も散歩中に飼い主さんの呼びかけに応えようとするようになります。
原因3 いつ飼い主さんの横を歩かなければならないと教えてくれた?
「いつ飼い主さんの横を歩かなければならないと教えてくれた?」が理由の場合、犬は飼い主さんの横を歩かなくてはいけないという認識はありません。それ以前に犬は飼い主さんの言うことを聞かなくてはいけないという認識すらありません。 つまり、犬が飼い主さんのいうことを聞きたいか聞きたくないかというのは犬と飼い主さんの関係そのものが大切になってきます。
引っ張り癖を直すには犬に飼い主さんの横を歩かないといけないんだと認識させる必要があります。そもそも犬は人間社会のルールを知りません。なので人間社会のルールを教えてあげる必要があります。犬が知っているのは犬らしい行動のルールです。その結果、それが人間社会のルールに当てはまらないことから「問題行動」というように言われるのです。
犬に人間社会のルールを教えるときに大切なことは「これはいけない」と禁止を教えるのではなく、「こうすればいいんだよ。」ということを犬に教えることです。 つまり引っ張り癖のある犬に「引っ張るな」と教えるのではなくて「飼い主さんの横を歩くといいことがあるよ」と覚えさせましょう。この時のポイントとして、犬にご褒美(おやつ)を見せながら歩きます。これが簡単で効果的な方法でしょう。
おやつは何でもいいのですが、おすすめはジャーキーです。柔らかいおやつや小さなおやつだとすぐに食べてしまうので、そのおやつ自体も飽きてきてしまいます。 そうなると犬の集中力も徐々に下がってきてしまいます。硬いジャーキーだと犬はなかなか食べられないので食べながらお散歩をすることになってしまいますが、おやつに対する楽しみというのも増やすことができるのですぐになくならない硬いジャーキーがおすすめです。
犬はその時視界に入るものやこととの関係を覚えています。つまり、引っ張り癖をなくすためには、そのときに飼い主さんの膝や太ももが視界に入っていることが大切になります。おやつを追って歩いているときに自然と飼い主さんの横にいるというのを演出してあげるのが大切です。
犬にとってはおやつを見つめて歩いていたらその結果自然と飼い主さんの横を歩いているというようになります。犬はしつけに対して何も義務感を感じていません。なので、気が付いたら自然とそうなっている、楽しい、喜ばしいという気持ちと犬が見ている景色や光景を一緒に見せてあげるのが大切です。
お散歩中におやつを持っていきます。おやつはジャーキーなどを細かくしておいてください。犬は1回の量よりも回数が多い方が喜びます。1回の量は本当に小さくて構いません。おやつを持った手を膝か太もも辺りに密着させます。おやつを見つめる犬の視線に飼い主さんの太ももや膝が入るようにするためです。
これを繰り返すことで、飼い主さんの太ももや膝が入る位置をキープして歩けるようになります。この時の楽しみながら、話しかけながら、褒めながら行うようにしましょう。リードを短めに持って歩きます。犬が引っ張ったらリードを引っ張って飼い主さんは向きを変え反対方向に歩きはじめます。これを繰り返します。すると犬は引っ張ると歩けなくなると学習し、引っ張らなくなってきます。
次は3歩くらい歩いたら立ち止まるを繰り返します。飼い主さんが歩いているときには横について歩き、立ち止まると犬も横で止まれたら撫でて褒め言葉をかけてあげます。小型犬など手が届かない場合は褒め言葉だけでも大丈夫です。できるようになったら歩く距離を伸ばしていきます。歩く距離が長くなっても飼い主さんの横について歩けるようになったらOKです。
大型犬と牧羊犬の場合の引っ張り癖の直し方
犬は犬種によってそれぞれの特徴があります。その特徴、癖などを知ることが何より大切です。大型犬だったら、牧羊犬だったら、小型犬だったらと特徴があるのですが、必ずしも全ての犬が当てはまるわけではありません。中には当てはまらない子もいます。こういう行動をしやすいという意味合いになるので、「うちの子は当てはまっているかな」というように考えてください。直し方自体は今までお伝えしたものを基本として、大型犬や牧羊犬の特徴を組み合わせてしつけをしていきましょう。
大型犬の場合
大型犬はとにかく運動が必要です。元々筋肉量が多いので歩いているだけでは運動量が足りない場合が多いのです。そのため歩いているだけの散歩ではなく、走らせることが大切になってきます。ドッグランなどで思いっきり走らせてあげることも必要になってきます。走りたいのに走れないというのが一番のストレスになってしまいます。常に運動不足の状態になっているので「もっと走りたい」と思っています。そのため1日のうちの朝と晩の散歩の時間がとても楽しみでストレスを発散できる時間になります。なので、楽しくて走りたくて仕方ないので、散歩中に引っ張るようになってしまいます。
また、お散歩中でなくても「もっと遊びたい」という気持ちから問題行動へ繋がってしまうこともあります。つまりお散歩中の引っ張り癖や日常の問題行動は、「走りたいのに走れない」「運動不足」というストレスから起こるのです。なので、これらを改善するためには思いっきり遊んであげる時間を作ることが大切です。平日は時間が取れないという場合には週末だけでもいいのでたくさん遊んであげる時間を作りましょう。
週末にドッグランへ行って思いっきり走らせてあげる、好きなように遊ばせてあげるというのも良いでしょう。大型犬の場合には1日1時間程度の運動が必要とされています。平日ここまで運動させてあげることができない場合には、週末に1時間以上運動させてあげるようにしましょう。
牧羊犬の場合
牧羊犬というとボーダーコリーやシェルティなどコリー犬が牧羊犬と呼ばれています。牧羊犬は知能と運動能力が高いのが特徴なので、しっかりとしつける必要があります。 牧羊犬は元々羊を追うことを仕事としていたので、飼い主さんがなかなか散歩に連れていけないという状況だと、かなりのストレスになります。牧羊犬は室内で可愛がられるために改良された愛玩動物とは違います。牧羊犬もペットとして飼われますが、室内で可愛がられるために改良された動物ではありません。広い牧場などで、羊を追い誘導するために改良された動物です。そのため、満足できるだけの散歩や遊びが必要不可欠になります。
牧羊犬ならではの知能の高さと運動能力を活かしたエネルギーの発散方法を行うことが大切です。フリスビーやフライボール、アジリティなどの遊びが良いのではないかと思います。毎日行うのは難しいと思うので、週末だけでも良いです。ドッグランや広場などに連れて行ってこういった遊びを一緒にしてあげることが大切です。
本当は毎日行うことで犬のストレスもたまらず、お利口に待てるようになりますが、難しい飼い主さんが多いと思うので、週末だけは犬に思いっきり遊ばせてあげるという時間を作るようにしましょう。
しつけの方法は飼い主さんと犬の数だけあります。飼い主さんと犬にしかわからない関係性もあると思います。犬にとっても合うしつけ、合わないしつけという方法があるので、「このしつけ方法でないとダメだ」と決めてしまわずに、犬に合う方法を見つけてあげるようにしましょう。飼い主さんも楽しみながらしつけを行うと良いと思います。また、ここでは基本中の基本である犬の本能については省きましたが、上手くいかない場合は犬の本能への理解に立ち返ってしつけをやり直してみてください。